今年最初のキスとハグを

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「怒ってなんかないよ。 怒るわけないだろう? 会いたかったから来たのに、怖いなんて言われたら、これ以上近寄れねーじゃん」 「え……?」 怒ってない? 「会いたかった……の?」 本当に? 本当に僕に会いたかった? 「あぁ……。 ずっと会いたかったよ……」 優しい瞳でにっこり笑う翔。 そんな翔を見ていたら、僕は胸がいっぱいになって、思わず翔に駆け寄ってしがみついた。 「翔……!」 僕も会いたかった。 ずっとずっと会いたかった。 両手を翔の背中に回せば、翔も僕を強く抱きしめてくれる。 「昴、この帽子可愛い」 そう言って、僕が被っているニット帽をポンポンと撫でる翔。 「クリスマス、これ被ってる昴と一緒に過ごしたかった……」 ため息混じりに呟く翔に、僕は何度も頷いた。 「ごめんね、翔……。 僕も翔と過ごしたかった。 それなのに、熱なんか出してごめんね……」 僕の言葉に、翔が首を横に振る。 「俺の方こそ、ごめん。 あんな寒い日に何時間も待たせて……。 本当にごめんな……」 お店の扉の向こうから、神社へ参拝する人達の声が聞こえる。 僕らは息を潜めながら、しばらく強く抱きしめ合っていた。
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