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気が付けば、空が少し明るくなり始めていて。
僕は、隣でぐっすりと眠る翔の横顔をずっと見ていた。
「翔、疲れちゃったんだね……」
あれから翔は、何度も僕を抱いて。
僕は幾度となく絶頂に達した。
翔のサラサラの前髪にそっと触れる。
もう二度と触れられないんだと思ったら、涙で枕が濡れた。
離れがたいけど、そろそろ行かなくちゃ。
夜が明けてしまう前に……。
ごめんね……。
結局、お別れなんて言えなかった。
翔のためを思うなら、嫌われてでもきちんと別れるべきだったのに……。
それどころか、もっと深く愛し合ってしまって。
翔の記憶の中に、かえって僕を強く残すことになってしまった。
お父さんと田中君が言うように、僕は自分のことしか考えられない人間なのかもしれない。
ごめんね、翔。
本当にごめん……。
こんな僕を、許してなんて言わないよ……。
ねぇ、もし。
もし生まれ変わりがあるんだったら。
今度こそ僕は、女の子に生まれるから。
そうしたら翔。
絶対に僕を見つけて。
そして今度こそ。
誰にも反対されることなく、一緒になろう……。
翔を起こさないように、ベッドから静かに起き上がる。
そして、床のあちこちに転がっている衣類を身につけると、僕は翔の部屋を後にした。
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