the last night

26/26
前へ
/326ページ
次へ
・ ・ ・ 気が付けば、空が少し明るくなり始めていて。 僕は、隣でぐっすりと眠る翔の横顔をずっと見ていた。 「翔、疲れちゃったんだね……」 あれから翔は、何度も僕を抱いて。 僕は幾度となく絶頂に達した。 翔のサラサラの前髪にそっと触れる。 もう二度と触れられないんだと思ったら、涙で枕が濡れた。 離れがたいけど、そろそろ行かなくちゃ。 夜が明けてしまう前に……。 ごめんね……。 結局、お別れなんて言えなかった。 翔のためを思うなら、嫌われてでもきちんと別れるべきだったのに……。 それどころか、もっと深く愛し合ってしまって。 翔の記憶の中に、かえって僕を強く残すことになってしまった。 お父さんと田中君が言うように、僕は自分のことしか考えられない人間なのかもしれない。 ごめんね、翔。 本当にごめん……。 こんな僕を、許してなんて言わないよ……。 ねぇ、もし。 もし生まれ変わりがあるんだったら。 今度こそ僕は、女の子に生まれるから。 そうしたら翔。 絶対に僕を見つけて。 そして今度こそ。 誰にも反対されることなく、一緒になろう……。 翔を起こさないように、ベッドから静かに起き上がる。 そして、床のあちこちに転がっている衣類を身につけると、僕は翔の部屋を後にした。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1067人が本棚に入れています
本棚に追加