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バスが無事終点に到着し、田中君に続いて僕もバスを降りる。
本来ならここから電車に乗り換えて、自分達の住む町に帰るところだけど。
近くまでお父さんが迎えに来ている僕は、ここからは車で移動することになる。
田中君はと言うと、お父さんが待っている場所まで一緒に来てくれて。
この辺りのカラオケ店で一夜を明かしたと、お父さんにうまくごまかしてくれた。
「じゃあな、菊池。元気でやれよ」
いよいよ車に乗り込むことになった僕に、田中君が言った。
「田中君も元気でね。
色々とありがとう」
本当にありがとう。
いつも僕を助けてくれて。
最後に、翔に会わせてくれて……。
田中君に出会えて、本当に良かった。
絶対に忘れないよ……。
車に乗り込むと、僕は助手席の窓を開けて田中君に手を振った。
田中君も僕の姿が見えなくなるまでずっと、大きく手を振ってくれていた。
さようなら、田中君。
さようなら……。
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