またまた嵐が来そうです

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「課長の電話も通じなくなったな」 と駅で蜂谷は呟く。  相変わらず、電車は動いていない。 「どうする?  一回家に帰って、父さんに車……はいろいろ、ややこしい話になりそうだから、自転車で律んち戻るか?」 と浅人が言ってきた。  そうだな、と呟いた蜂谷は、混雑している改札口の方を見て言う。 「いや、やっぱ、やめとこう」  えっ? と浅人が訊き返す。 「よく考えたら、あの課長がヘマなんかするわけない気がしてきた。  あの人が息子に出し抜かれるようなマヌケなら、俺はとっくの昔に杏と付き合ってる」 「まだ言ってんのか。  しつこいな~、蜂谷」  いっぱい言い寄られてるくせに、杏なんかの何処がいいんだ、と言いながら、浅人もなんとなく、 「じゃあ、帰ろうか」 と言い出した。
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