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外はまだ嵐だが、なにかを誤摩化そうとするように話す杏の声は、廊下まで聞こえていた。
「やだな。
律がそんなことするわけないじゃないですか。
ちょっとふざけただけですよ」
どうやら、そういうことで終わらせようとしてくれているようだ、と律は思う。
ありがたいような、結局相手にされてないんだな、と寂しいような。
まあ、これからも此処で暮らしていくのなら、そうまとめるのが一番いいことなのだろう。
……でも、最初に僕をいいって言ってくれたの、杏さんなんだけどねっ。
ただ杏にとっては、最初から自分は可愛い仔犬のようなものだったのかもしれないが。
律がそんなことするわけない―― か。
確かにできなかったな、と思う。
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