またまた嵐が来そうです

76/77
前へ
/174ページ
次へ
   外はまだ嵐だが、なにかを誤摩化そうとするように話す杏の声は、廊下まで聞こえていた。 「やだな。  律がそんなことするわけないじゃないですか。  ちょっとふざけただけですよ」  どうやら、そういうことで終わらせようとしてくれているようだ、と律は思う。  ありがたいような、結局相手にされてないんだな、と寂しいような。  まあ、これからも此処で暮らしていくのなら、そうまとめるのが一番いいことなのだろう。  ……でも、最初に僕をいいって言ってくれたの、杏さんなんだけどねっ。  ただ杏にとっては、最初から自分は可愛い仔犬のようなものだったのかもしれないが。  律がそんなことするわけない―― か。  確かにできなかったな、と思う。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1323人が本棚に入れています
本棚に追加