1322人が本棚に入れています
本棚に追加
「大欠伸だね、杏さん」
通勤電車の中、杏はひとり、大欠伸をしていた。
結局、風邪をひいてしまった向井は、昨日の嵐と電車の遅延を知った部長に、昼からの出社でいいと言われたので、この電車には乗っていなかった。
すぐにお風呂に入って温まらないから、と杏は苦笑いする。
「久しぶりだね、杏さんとこの電車に乗るの」
と横でつり革を持つ律が笑って言ってくる。
「お前の目には、俺も蜂谷も入っていないようだな」
とその横で、浅人が恨みがましく言っていたが。
嵐に寄る電車の遅延はともかく。
結局、スマホの不通の原因も、新幹線の停電の原因もわからず、
「なんだか律の怨念が携帯の電波を不調にして、新幹線と電車を止めた気がするよ」
と浅人は呟いていた。
最初のコメントを投稿しよう!