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それは幻なんかじゃない。実際にいた。今こうして、私に会いに来てくれる。
それは甘かった。どこまでも甘美で、私を酔わせてくれた。これほどの現実逃避は無いだろうし、これほど魅せられる男性にも、もう会う事は無いだろう。
それとも彼は平凡な男なのだろうか。私が甘えたかっただけで、その甘さが大好きで、離れたくなかっただけなのだろうか。
彼が歩いてくる。私は板チョコを持っていた。彼の嫌いな板チョコを。私の大好きな板チョコを。
「これ。あげる」
なるべく素っ気なく、私は彼に板チョコを差し出した。
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