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「彼氏作るなよ。あと巨乳、誰にも触らせんな」
「……あのさ、いい加減はっきり言ったら」
最後まで知らんぷりしてくれるんだろうと思ってた結以がそんなことを言い出したので、オレはちょっと動揺して結以を見つめた。結以はにやっとして、オレの言葉を待っている。だからオレは逃げられず、居住まいを正してごほんと一つわざとらしい咳払いをすると、深く吸った息を吐き出すのと一緒におりゃっと告げた。
「好きだ」
巨乳じゃなくて、いや巨乳もだけど、結以が。告白した後で急激に恥ずかしさが込み上げて頭がぽうっとしたので、オレはちょっと無様なくらいしどろもどろになった。そんなオレを結以は「あはははっ」と豪快に笑い飛ばして、笑いすぎて滲んだ涙を人差し指ではじいた。
「あたしは晴ちゃんが好き」
あっそう、知ってた、てかだったら言わせんなよ、と頭ん中でいろんな言葉がぐるぐるしたけど、そのどれも口にしたところでフラれたのを認めることになってしまうだけなので、オレは黙った。つーかオレの一世一代の告白を。笑うなよ。
「ちょーいい男になって見返してやっから、後悔すんなよ」
「なにそれ女子かよ。キモっ」
そのロン毛なんとかしてから言えよ、マジキモい、と散々に罵倒され、オレはちょっと傷つく(結以はオレにキモいって言いすぎだ)。でもオレは、どうしたって兄貴にはなれない。容姿端麗、文武両道、品行方正、特殊な才能あり、な兄貴には、なれない。兄貴にできたことのほとんどが、オレにはできない。
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