始まりの場所、帰る場所

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「やっと終わったー」  一階に下りると、結以はダイニングのテーブルに突っ伏した。だらりと両腕を前に伸ばして、「くそめんどかった!」と叫ぶ。キッチンを出たオレは「おつでした」と言ってポテチとコーラを恭しく捧げた。親は二人とも仕事で、家にはオレと結以しかいない。  エロいことすんなら今だな、と思うけど、結以はオレのことを「勘違い野郎」としか認識してないので、到底ムリなんだった。 「ほんとあんたにはいいように使われっぱなしだわ」  ばりばりとコンソメ味のポテチを噛み砕くすっぴんの結以の唇は、油でてらてら光っている。キスしたい、と真っ昼間だっつうのに底なしの性欲を持て余しながら、オレもポテチを頂戴した。結以が脚をぶらぶらさせるたび、木目の椅子がみしみし音を立てる。 「この礼はオレのライブご招待で返しますから」 「いらねー! 罰ゲームじゃんむしろ!」 「なに、またドラム叩きながら歌っちゃうわけ? キモっ」と結以の反応は惨憺たる有様だったけど、オレは反論するすべを持たずに口を尖らせた。
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