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それはつい先日のことだった。
長南の家で仲の良いメンバーを集めて誕生日会を開くことになった。
当然、呼ばれることの無い筈の俺が、なぜかその誕生日会に呼ばれた。
理由は?
「単なる数合わせに決まっているだろう」
そう長南に面と向かっていわれたので、参加するのを拒否ろうと思った矢先、野口真理子も呼ばれていると聞いて、俺は考えを改めた。
野口真理子は背は160cm後半。長い髪を後ろで一つにまとめて、黒縁メガネをかけている。その声は優しく、いつも俺が近くに寄ってくると、なぜかいろいろと気にかけてくれる。
俺は嘘でも『俺のことを気にしている。恋している』と一人勘違いをしている始末だ。
しかし、今回の誕生日会に呼ばれたなら、彼女の真意が少しでも感じ取れるかもしれない。それなら・・・。
男のプライドを捨てて、憎い長南主催ではあるが、数合わせで誘われた誕生日会に出席にしない手は無い。
ただ、問題が一つあった。
それは、参加者は一人一品の料理を作ること。料理は何でもOK。何か買ってきた物をそのまま出すのだけはNG。なにかしら手を加えればOK。
未だかつて、一人暮らしは長いくせに料理をしたことが無い俺には、かなりの難問だった。
「俺、料理は出来ない・・・」と長南にいうと、「何かしら作れるだろう。インスタントラーメンとか」というので、「ならインスタントラーメンでいいのか?」と返したら、「馬鹿!言葉のたとえだよ」といい返された。
『俺に出来る料理・・・』
一人仕事中でも誕生日会に作る料理を考えていた。
仕事の合間を縫ってスマホを使って簡単料理を検索してみる。
すると、確かに簡単な料理はたくさんあがってくるが、どれも自分が食べて美味しいと感じられるメニューではない。それに、どれも食べた記憶が無かった。
食べた記憶の無いものをこれから作って食べようとは思わない。けど、何か作らないといけないことには変わらないのだ。
「なにがいいかな・・・」
一人ベッドに横になって天井を見つめながら考える。
なぜか、こういう時ってなにも思いつかないものだ。
いっこうに頭にはなにも閃くものがこない。しかし、時間と共に腹は減る。
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