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第5話 白き花は闇に輝き
「死神さん。会いたかった」
志津音は嬉しそうに男を見上げる。
その瞳はあたかも、
満点の星空を湛えたようにキラキラと煌めく。
「俺もだ…志津音」
と答えた男のオリエンタルブルーの瞳は、
かつて無い程に優しい光で輝く。
男は堪らない程愛しさが込み上げ、
胸に抱きしめたい衝動に駆られる。
…そして少女に一歩近付く…
志津音は、
男の胸に頬を埋めたい衝動が湧き起る。
…私を、抱きしめて…
男にその身を委ねるように、
そっと男に近づいた。
二人はどちらからともなく、
自然に抱き合った。
男は少女を胸に抱きしめ、
魂の奥底から湧きあがる愛が目覚めるのを感じた。
そして初めての感情に戸惑いつつも、
この少女を全力で守り抜き
出来るだけ願いを叶えてやりたい、
と強く感じた。
少女は男の胸に顔を埋め、
男の腕に抱きしめられ、
全てから守られているという
絶対的な信頼、そして安心感を覚えた。
二人はまるで時が止まったかのように
そのまま抱き合い続けた。
…風が優しく二人を包む…
鳥が囀り、二人に祝福の歌を奏でる。
赤、白、ピンク、斑の椿の花々は
二人を見守るように風に身を任せワルツを踊る…
やがて二人は、
示し合わせたかのように見つめ合い
そして微笑みあった。
男は少女の星空のような瞳に見惚れ、
少女は男のオリエンタルブルーの瞳に見惚れる。
そして男は
少女の形の良い小さな唇に、
自らの唇をそっと寄せる…
少女はそれを心待ちにしていたかのように、
微かに唇を開け、
男を受け入れようと目を閉じた。
二人の唇が重なる瞬間、
少女は夢から覚め
「ダメ!うつるわ!!」
と声を上げた。
男は一瞬驚きの表情を浮かべるも、
すぐに笑みを浮かべ、
「バカだな。死神にうつる訳ないだろ」
と優しく答えた。
「そう言えば、まだ名乗ってなかったな。
俺はサマエル。サマエルと呼んでくれ」
と頬微笑んだ。
少女は安心し納得したように頷き、そして微笑むと
「…サマエル…」
とその名を噛みしめるように呟き、
顔を少し上げそして目を閉じた。
唇を微かに開け、
先ほどの続きをさり気無く促す。
男はこの上無く優しい笑みを浮かべると、
そっと自らの自らの唇を重ねた。
…そして男は少女の唇を堪能する…
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