第6話 闇は迷い、白椿は誘う。

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サマエルは大鎌を振り下ろす寸前に、 …この男にも、 想う女はいたのだろうか… と言う疑問がふと芽生える。 彼は慌てて大鎌を持ちなおし、 体制を整えた。 「マズイ。迷いは断ち切らねば。集中しろ、俺!」 彼は自分に喝を入れると、 一気に男の頭上に大鎌を振り下ろした。 男は安らかな顔で、 こと切れていた。 サマエルはホッと胸を撫で下ろす。 死んだ男の胸に白く神々しい光が集まる。 そしてそれは、 徐々に蓮の花を形どった。 光の蓮の花は、 フワリと待ってサマエルの両手に乗る。 あれから志津音と一旦別れ、 サナトリウム内で刈るべき魂を刈り取っていた。 言わば仕事である。 仕事を素早く正確にこなし、 その後で志津音の元へ行くのだ。 もし彼女が寝ていたら、 添い寝をする。 仕事以外は志津音の元で過ごす。 二人の間で、 そんな約束事がなされていた。 だが、 素早く仕事をこなそうにも、 大鎌を振り下ろす瞬間に先ほどのような迷いが生じてしまう。 彼は秘かに、 自らの仕事に疑問を持ち始めていた。 夜の帳が落ち始めた頃… サナトリウムから1キロほど離れた場所で、 サマエルはウリエルを待つ。 彼の右傍らには、 6個程の光の蓮の花がフワフワと舞っていた。 「待たせたな」 ウリエルは彼の前に舞い降りた。 サマエルから蓮の花を丁寧に受け取り、 光で6個の筈の花を包み込む。 不意に、 何かに気付いたようにウリエルは深紅の瞳が、 鋭くサマエルを見据える。 「迷うな!!! お前の仕事は魂を刈り取る事。 お前の迷いは、魂の転生を狂わせ ひいてはこの宇宙にも歪が起きてしまう!!」 ウリエルはそう叫ぶと、 左腰の銀色の剣を引き抜いて、 その切っ先をサマエルの首筋に向けた。 「迷いを断ち切れ!!!」 ウリエルは言い放った。 サマエルは降参したように両手を上げ、 「そうだな、その通りだ」 と自嘲しつつ、 ウリエルを見つめた。 ウリエルはそっと剣をおさめると 穏やかな眼差しで彼を見つめ 「…お前のプライベートの事は何も言わん。 だが、仕事はしっかりと割り切れよ」 と言うと彼は光の蓮とともに天へ飛び立って言った。 サマエルはそれを見送りつつ 「ヤレヤレ。あの堅物男に指摘されるようじゃ、 俺は相当鼻の下が伸びてるんだろうぜ」 と苦笑し、肩をすくめた。 そして志津音の病室へと瞬間移動した。
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