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第9話 白椿、紅《くれない》に輝いて
女は男の腕の中で、目を覚ました。
愛の行為の後、そのまま気を失うように眠ってしまったようだ。
二人とも、生まれたままの姿である。
…死神も、眠るのね。長い睫毛。
白髪で白い睫毛なんて、仙人みたいだけど、
こんなに綺麗で若々しく、りりしい青年なんて…
女は幸福感を味わい尽くすように、男の胸に顔を埋めた。
…トク、トク、トク、トク…
男の鼓動に耳を傾け、
自分がまだ生かされている事に奇跡を感じる。
最期の瞬間を、
この上無い幸福へと導いてくれるのが「死神」だという事実が、
なんだか酷く皮肉にも、また滑稽にも思えた。
女は微笑みつつ、自らの花びらに右手を添わす。
…昨夜の彼の激しい愛で、
花びらと花芯がジンジン熱いのだ。
シーツに咲いた赤い花びらは、まるで椿の花弁のようだ。
その時、自分は女になったのだ。
何だか誇らしいような、照れくさいような、
くすぐったい気分だった。
「大丈夫か?」
男は目を覚まし、腕の中の女を優しく見つめる。
オリエンタルブルーの瞳が、優しい光を宿す。
女は恥じらうように頷くと、男に跨り、その目を見つめた。
満点の星空のような瞳が、妖しく輝く。
漆黒の艶髪はサラサラと流れ、男の顔に触れる。
…そこには、昨夜までの少女の姿は無く、紛れもなく成熟した、
妖しいまでに艶めかしい女がそこにいた。
女は男の形良く引き締まった男らしい唇に吸い付く。
二人は舌を絡め合い、貪りあう。
互いの激しい吐息が、情欲に情に火をつけあう。
女は男のそそり立つモノに、左手を這わせ握り締めた。
それを合図に、男は女を下に寝かせ、
体重をかけぬよう女の上になる。
そして情熱的な眼差しで女を見つめると、女の首に吸い付き、
露わになっている乳房を左手で激しく揉みしだき、
右の乳首に吸い付く。
「あっ」
女は快楽の声を上げ、目を閉じてその瞬間を待ち望む。
もう、子宮がじんわりと熱くなり、花芯と花びらが蠢き始めた。
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