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その男は、闇のローブにマントを纏い、闇色の剣を左腰に差している。その背には闇色の大鎌を背負っていた。ストレートの髪は純白に輝き、腰の下まで伸ばされている。
その瞳の色は、神秘的なオリエンタルブルー。心持ち小麦色の肌の、非常に整った顔立ちの長身美丈夫であった。尖った耳が、彼が人間では無い事を更に後押ししている。
「あなたは、もしかして死神様?」
志津音は苦し気に喘ぎながら、その男にそう声をかけた。心なしか、その大きな瞳は輝きを増し、彼を歓迎しているかのように見える。
男は呆気に取られてその少女を見つめた。少女は白い花を思わせる。男はそう感じた。自分の姿を見ても怖がらないどころか、嬉しそうに自分を見つめるのだ。こんな人間は初めてで、なんと声をかけて良いか分からなかった。
今にも崩れてしまいそうなほど小柄で折れそうな細い体、だが、少女は病み衰えても尚美しかった。肺を病む者に特有な、蝋燭のように青白く透き通る肌。卵型の小さな顔。
整った美しい漆黒の眉。スーッと通った上品な鼻筋。夜空に瞬く星のように輝く漆黒の大きな瞳。淡い桜色の小さな唇は薔薇の蕾を思わせる。そして、肩の下まで伸ばされた黒髪は、見事な艶を誇っていた。光に透けて消えてしまいそうな程儚げであるのに、命の炎はその勢いを増し、狂おしい程に少女の美しさに存在感を与えていた。
「……お前、俺が怖く無いのか?」
その男はしばらく少女に見惚れたのち、やがて、そう口を開いた。
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