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……この少女と、もう少し話がしてみたい……
男の胸に、そんな想いが湧き起こる。そんな自分に戸惑いつつ、そっと少女を抱えそしてベッドへと運んだ。
「まだ、お前を刈り取るには猶予期間がある。死すべき宿命の時期では無いのに逝ってしまいそうな時限定で使える魔術だ。一時的なものでしかないが……」
と意識を失っている少女に話しかける。男のオリエンタルブルーの瞳は、この上なく優しい光で満ちていた。
丁寧に彼女を寝かせる。そして右手を少女に翳すと、右の掌からダークグレーに輝く光が溢れ出した。その光はやがて大きくなり、キラキラと輝きながら少女の全身を包み込んだ。まるでその光は、ダイヤモンドダストのように煌めく。
すると、血にまみれていた彼女の口まわり手、そして血に汚れた白いパジャマがみるみる綺麗になっていく。そして彼女の青く透き通るような顔色も、徐々に青白い元の色へと戻っていった。
男の掌から光が消える。それと同時に、男も消えた。
病室には、穏やかな寝息を立てる少女が眠っていた。
庭に咲き誇る白い椿が、風もないのに一瞬だけ揺れる……。
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