第3話 闇は白き花を想う

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そして浅黒く艶やかな肌。 彫の深い顔立ち、 銀色の睫毛は長くその瞳はルビー、 そう、 あのビジョン・ブラッドを 思わせる澄んだ深い赤い色をしていた。 エキゾチックな美貌の持ち主である。 ウリエルは光と闇を扱う。 その為、 死神が刈り取った魂を受け取り、 人間、妖怪、精霊等 ありとあらゆる死者の死亡理由、 宿命寿命時期のリストがある 「死神総本山」 で その全てを管理する 大天使アズラエルの元へと魂運ぶ役目を担う。 そしてアズラエルの元に運ばれた魂は 神の元へ運ばれ、 転生か、魔界か、天界か、無に返すかそれとも… 次なる魂の行方が決められるのである。 男はフッと微かに笑うと 「いや… このサナトリウムでの仕事は少々気が滅入ってな。 少しボーっとしていた」 と答え、ウリエルに魂の光の蓮の花を差し出した。 ウリエルは両手でそれを丁寧に受け取ると、 彼の両掌から稲妻を思わせる淡い黄色の光が溢れ、 その光で魂の蓮の花を包み込んだ。 その光はそっと宙に舞い、キラキラと輝く…。 「そうか。あまり思いつめるなよ」 とウリエルは言うとその光と共に消えた。 ウリエルが去った後に優しい風が吹く…。 そして白い椿はそっとその身を震わせた。 男はそっと白椿に右手を伸ばす。 そして優しくその花に触れた。 「…志津音…」 再びその名を呟いた男のオリエンタルブルーの瞳は、 この上なく優しい光を宿し、 静かに輝き始めた。
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