第4話 白き花は闇に咲き

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志津音は嬉しそうに空を見上げ、 「死神さん…」 と小さく呟いた。 昨日の黄昏時に出会った死神…。 あの時、 自分はもう死ぬのだと思った。 しかし、 今朝起きると喀血した筈の痕跡はどこにも無く…。 体は軽やかで熱まで下がっていた。 …死にゆく私への死神様からのプレゼントだわ… と志津音は思う。 彼のオリエンタルブルーの瞳がとても印象的だった。 死神なのに、 怖さは微塵も無く美しい…。 喀血した時、 確か彼は自分を心配してくれた。 うっすらと覚えている。 あの時の彼の心配そうな、 そして慌てている様子が嬉しかった。 …自分を本当に気にかけてくれる人は もう居ないから… この男の腕の中で逝けるのなら、 死のその瞬間も怖くない。 何故かそう確信できた。 …自分にはあとどのくらいの時間が 許されているのだろう?… また会いたい! と志津音は強く思い、 同時に もっと色々な話を彼に聞いてみたい、 と感じた。 そして、 このワンピース姿の自分を 彼に見て欲しかった。 男は空を飛んでいた。 仕事を終え、少し休憩をしていたのだ。 サナトリウムが見えてくる。 「志津音?!」 男はサナトリウムの庭に、 志津音がいるのを見つけた。 男は志津音が目に入った瞬間、 居ても立っても居られなくなり、 志津音の元へと瞬間移動した。 …志津音を驚かせないよう、 男は白椿の木の後ろに姿を現す… そしてわざと足音を立てて歩いた。 志津音は音の方をそっと振り返る。 男と目が合うと、 「死神さん!やっぱり会えた…」 と嬉しそうに微笑むと、 そっと立ち上がった。 「志津音…」 男は目が合うと、 彼女の元へ瞬間移動した。 二人は向かいあい、 そして見つめ合った。 陽の光が、優しく二人を照らす…。
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