ショコラに愛を込めて

2/7
前へ
/7ページ
次へ
クーベルチュールノアールを細かく細かく刻む。 全体の3分の2の分量を湯煎にかける。  部屋中、甘い匂い。  ステンレスのボウルの中で、艶のあるチョコレートがうねる。まるで夜の海のように。 スパチュラで、チョコレートの海を何度も漕いで、手の届かないあの人の元へ。  変わらない愛を囁いてくれた。 誰よりも愛していると。  妻よりも、私を愛すと。囁いてくれた。 妻とはもう、会話もしていないと。 しばらく家にも帰っていない、と。  誰にも言わない、秘密の恋。 日常ではただの上司と部下。 だけど私の部屋に来る貴方は、1人の男。 いつも力強く、私を抱く。  ……抱いて、朝には消えていく。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加