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クーベルチュールノアールを細かく細かく刻む。
全体の3分の2の分量を湯煎にかける。
部屋中、甘い匂い。
ステンレスのボウルの中で、艶のあるチョコレートがうねる。まるで夜の海のように。
スパチュラで、チョコレートの海を何度も漕いで、手の届かないあの人の元へ。
変わらない愛を囁いてくれた。
誰よりも愛していると。
妻よりも、私を愛すと。囁いてくれた。
妻とはもう、会話もしていないと。
しばらく家にも帰っていない、と。
誰にも言わない、秘密の恋。
日常ではただの上司と部下。
だけど私の部屋に来る貴方は、1人の男。
いつも力強く、私を抱く。
……抱いて、朝には消えていく。
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