10/12
前へ
/12ページ
次へ
「本当に災難だったんだね……。っていうか、僕のせいで中根さんの男運がないって、本当なら申し訳なさすぎるというか」 「その占い師さんが言うには、天馬くんにあの時のことを許してもらえれば大丈夫だって」 「許すも何も、僕は君のこと呪ったりしてない。むしろ死を覚悟したとき、『どうせなら漆黒の闇を身に纏ったカッコいい悪魔になりたい』って強く願ってしまった。僕が君のことを忘れられなかったせいなのかな……」 「なんか、それこそ私のせいで天馬くんの人生どころか、その先まで左右されちゃったってことだよね。本当にごめんね……」  私の頬に涙が一筋伝っていった。  それを見ていた天馬くんが首を何度も横にふった。 「おかげでこうして君に会えた。僕にとっては悪いことなんて何ひとつない。中根さんが好きだったアポリュオーン様もとても素晴らしい方だ。まだまだ僕は足元にすら及ばないけど」 「天馬くん……」 「中根さん、1つだけ頼みがあるんだけどいい?」 「私にできることなら、何でも言って」 「君にしかできないこと。僕に『またね』って言ってほしい」 「そんなことでいいの?」 「僕は、君に初めて『またね』って言われたとき、恋に落ちた。それからは今日も言ってもらえるかなって毎日ドキドキしてた。君は僕の中学時代そのものってくらいにね」 「そうだったんだ……」 「君に告白したあの日も、最後にどうしても聞きたくて呼び止めたけど……。結局はあの出来事以来、一度も言ってもらえなくて」  また、私の目から涙の粒がはらはらと落ちていった。  なんてことだろう。  そんな簡単なことを、どうして私は天馬くんにしてあげられなかったんだろう。  男運を上げるとか、早く家に帰りたいとか、自分勝手なことばかり考えている私が恥ずかしくて仕方ない。 「そんなに泣かないで。僕にお別れの言葉をくれたら、元の世界に戻してあげる。もちろん『罪の清算』とやらもそれで完了」 「で、でも、そんなの私だけ幸せになるみたいで……」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加