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「男運がアップしたって、幸せになれるかどうかは結局中根さん次第だよ。僕もここで頑張って、きっとアポリュオーン様みたいなかっこいい悪魔になってみせる」
「じゃあ私、待ってる。天馬くんのこと……。このままさよならしても人を好きになんてなれない」
泣きじゃくる私を見て、天馬くんはあたふたしながらこう言った。
「それじゃあ、君が人間としての天寿を全うしたら、ここに来るかい?」
「えっ」
「そのときまでに僕は目標を達成してみせる。だから君も、君の人生を精一杯生きてほしい。そして最期を迎えたとき、その気持ちがまだ残ってたら、僕に会いたいと強く念じてみて」
涙でぐしょぐしょな顔を上げて、つぶらな瞳を見る。
そして、大きく頷いて見せた。
「……よし。じゃあ、元の世界にお帰り」
「あ、ありがとう、本当に……。」
「こちらこそ。君が会いに来てくれるなんて本当に奇跡みたいだ。体に気を付けて、きっと素敵な彼氏を見つけるんだよ。……さあ、行って」
また涙が出てきて、こくこくと首を動かすことしかできなかった。
目の前で私に手をふる天馬くんの姿が滲んでいく。
ちゃんと見ておかないと、もうお別れしないといけないんだ。
私は涙をこらえて、手を振り返す。
「……またね」
「ありがとう、またね」
すぐにぎゅんっという音が近くで聞こえた。
私の体は再び何かにつかまれて、どこか遠くへと運ばれていく。
手を振る天馬くんの姿が、だんだんと小さくなり、とうとう見えなくなると、泣き疲れた私の意識は一気に途切れた。
再びはっとなって目を開けると、井戸の手前に倒れていた。
私、今まで何して……?
井戸に近づこうとして、すっころんだのは覚えてるけど。頭でも打っちゃったんだろうか。
それから、なんか。うーん……。
とても大事なことを忘れてるような気がする。
ていうか、私、なんでこんなに泣いてるの?
ぼーっとしていると、ジーンズのポケットで携帯が振動した。
確認すると、見覚えのないアドレスからのメール。どうやらこないだの占い師さんかららしい。
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