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「ま、またね、ですか?」
「この『またね』という言葉が、過去のアクセスポイントとなって、現在切れてしまっている線を結び直すのに助力してくれるわけです」
「同じクラスだったし、昔からよく『またね』を使うほうなので大丈夫な気がします」
「それならば問題ないとは思いますが、もし言ってなかった場合、こちら側から伸ばした糸が着地点を失って、地獄を見ることになるそうですから気を付けてください」
「ひいいぃやああぁ」
かくして私は、この場所にやってきた。
あの占い師さんには結局、恐怖ばかりを与えられてた気がする。また思い出してぶるっと悪寒がきてしまった。
こんな人里離れた山奥までやってきて、奮発した五百円玉を投じるわけだから、効果なしの場合、占いサイトのレビューに包み隠さず書いてやると誓いを立てる。
祠の裏手に回ってみる。
聞いた通り、そこには古い井戸が口を開けていた。
周囲は簡単な木の柵が取り付けられているだけで、誤って落ちる人がいても不思議じゃない。
もっと近づこうとして、草むらに隠れた石の土台部分に足を引っかけて派手にすっころんだ。うまく受け身がとれず、背中を打って軽く悶絶する。
むしろ井戸に落ちなくてよかった……。
気を取り直して、ポケットから五百円玉を取り出す。
それを軽く握りしめたグーの手ごと額に当て、再会したい人の顔と名前を思い浮かべる。
その人の名前は、――上野天馬(うえの てんま)。
中学1、2年の頃にクラスメイトで、印象的な名前以外は忘却の彼方。
言い訳をすれば、そもそもあいさつくらいしか言葉を交わしたこともなく、その後はクラスが変わりさらに疎遠になってしまった。
あまり見たくない当時の日記を引っ張り出して、なんとかフルネームはゲットした。
それをネットでも検索すると、同名のSNSページはヒットするけどプロフ内容的に本人の可能性は低そうだった。
なんとか伝手を辿って聞いた話では、ほどなく転校したらしく卒業アルバムにも載ってないとのこと。
顔は、ほんわかとイメージというか雰囲気だけなら思い出せる気がする。もはや正しいかどうか確認のしようもないけど。
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