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「好きです。僕と付き合ってくれませんか」
天馬くんがそう言った。
あまりに突然で、あたしはなんと答えていいものか頭が真っ白になった。
でも、あたしには。
この世に生を受けるその前から、定められていた方がいるんです。
OKなどどいう返答は、申し訳ないけど金輪際ありえない。
「天馬くんはその名が示す通り、光の神々の加護を受けし者」
「えっ」
「そしてあたしは……、闇の軍勢を率いるアポリュオーン様の眷属だから、光属性の天馬くんとは相容れない存在なの。もうじきまた光と闇の永く激しい戦いが幕を開ける。そうすれば、あたしはすぐにこの仮初の身を捨てて旅立たなくては。アポリュオーン様の右腕となって戦場を駆ることがあたしの運命なの」
そして、愛しいアポリュオーン様の御前で片膝をついて控える自分を想像する。
あたしの顔を見て、その凛々しいお顔に一瞬だけふっと微笑みを浮かべてくれたりして。
えへ、うふふふふっ。
「それじゃあ、僕も闇の軍勢に入れてほしい。君を守りながら一生懸命戦うから」
「だめ! そんな澄み切ったオーラに身を包んで地獄へやってきたら、暴食を持て余すヘルハウンドたちの恰好の餌になる。やめといたほうがいい」
「少しくらい食べられたってかまわない。それでもいいから僕は中根さんと付き合いたい。お願いします」
あたしの妄想にもついてきてしまう天馬くんには正直驚いた。
ついてきてるって言うかうまくバットで打ち返してるっていうか、こんな話聞いたら普通にひくと思うんだけど……。
「しつこいなあ。だめっていったらだめ! あたしの全てはアポリュオーン様に捧げてるんだから、あなたにあげられるものは何ひとつないの」
「じゃあ、ぜんぶひっくるめて君ってことで、あぽりゅおん様も好きになれるように頑張る」
なにそれ、包容力のキャパが想定外なんですけど……。
いい加減キレてしまったあたしは、少し声を荒げて天馬くんに言い放った。
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