8/12
前へ
/12ページ
次へ
 それは今も変わらず続けてるし、二度と会う予定がなくてもそう言うことにしていた。  2年間もクラスメイトだったのなら、別れのあいさつの一度や二度してるはずなんだけど……。  それは置いておくとしても、とりあえずここからどうやって帰るべき?  全く知らない場所にいきなり飛ばされてくると、動くことすら難しい。一歩踏み出した先で何が起こるかなんてわからないから。  だんだんいろんなことが遠く感じるようになり、不安のあまり涙がこぼれてきた。  こんなとこで暮らすくらいなら、彼氏も結婚もなくたっていい。  だって、命のほうが大事だもの。  もう帰りたいよおおおぉぉ。  うわああぁん、おかあさあああぁぁん。 「ここで何をしている」  背後からの声に、心底驚いて跳ね上がる。  それでも恐怖心と好奇心の両面から、後ろを振り返ってしまった。 「お前は人間か」 「ひいいぃやああぁ」  そこにいたのは恐ろしくデカくてグロい虫のような体に、小さな人間の頭がついた生命体だった。  しかも、背後にはさらにいろんな格好をした、お世辞にも見ていたいなんて思えない面々を大勢引き連れてる。  うん、軽く卒倒しそう。 「どうされたのですか。アポリュオーン様」  薄れゆく意識が、その言葉で一気に引き戻される。  えっ、今、アポリュオーン様って言った?  私の聞き間違いじゃないなら、まさか、この人(?)が。  私の知ってるキャラとは似ても似つかない、というか完全に別の生命体なんだけど……。 「ペーガソスか、見かけぬ者がうろついていたのでな」 「見かけぬもの、とは……」  アポリュオーン様の背後にいる連中をすり抜けて、白い馬のような頭をした人(?)が前に出てきた。  比較的ソフトテイストな外観に、少し安堵する。  ペーガソスと呼ばれたその人(?)は、目線が集まっている私をじっと見つめた。  そして、顔色(?)がみるみる変わる。 「き、君は……! も、もしかして、中根さん!?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加