またあした

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 7時のテレビはどのチャンネルをつけても緊張した面持ちの総理大臣が映っていた。試しにラジオもつけてみたが、やっぱり同じ中継を流している。インターネットもプロバイダのトップページは全て同じく緊急会見を見るように案内している。  「今回の危機は、トリノスケール10と判定されています。詳細については、世界中で、その国を代表する専門家による説明がなされています。ここからは国立天文台の大藪博士に説明していただきます。みなさん、どうか落ち着いてお聞きください」  「トリノスケールって、何か聞いたことあるよね。確か恐竜が滅びたときがどうとか・・」  テレビには大藪博士と紹介された男が映っている。あまり学者っぽくない、骨太な感じの男だ。  「簡潔に説明すると、このたび、直径30キロの小惑星が地球に衝突することが確実となった。今から10日後だ。直径15キロで恐竜が滅びたことから考えて、今回の災害の規模は分かるだろうと思う」  「それは、地球が滅亡するということですか?!」記者の一人が恐る恐る聞いた。  「馬鹿言っちゃいかん。それしきのことで地球が滅びるもんか」  ほっと一瞬胸をなでおろしかけたが、  「この星の表面に張りついとる生態系が、全てリセットされるだけだ」  「全て?」  「全て、きれいさっぱり」  記者席から悲鳴があがる。  「だいたい、生き残れる余地があったら発表される訳がないだろう。助かる可能性があれば、それは一握りの人間が独占するために秘密にされるんだ。今回は地球上に生き残れる場所など無い。空も海もめちゃくちゃにシェイクされるんだ。どんな金持ちも権力者も平等にきれいさっぱり人類は滅びる。逃げ込む場所も無いからパニックも無い。そういう判断だ。世界の首脳もたまには合理的に判断するもんだ」  正一も恭子もしばらく声も出なかった。さくらは訳もわからず鳥の巣鳥の巣と言って笑っている。  「明日、会社どうしよう・・・」
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