0人が本棚に入れています
本棚に追加
日曜日の夕方。国民的アニメに休日の終わりを感じてブルーになる時間帯。ビールを飲みながらテレビを見ていると、チャイムのような音とともにニュース速報が流れた。
「また地震でもあったかな」
「最近ほんと地震多いわねえ」
竹尾家。夫、正一36歳。妻、恭子34歳。娘、さくら6歳。3人家族で郊外のアパート暮らし。正一は教材販売の営業員をしている。年老いた両親を田舎に残して別居していたが、3年前に母親の咲枝を亡くし、父親の正二郎70歳も一年前から入院している。さすがに田舎の病院に入院させていたのでは様子を見に行くこともできないので、東京の病院に転院させ、時々顔を出している。正二郎はさくらに会うことを何より楽しみにしているので、ちょっと息子らしいことをしてやったと思っている。
「午後7時から、政府による重大会見があります・・・世界同時発表の重大会見となりますので、全国民必ず視聴してください!何なんだそりゃあ!」
気が付くと外では自治体の防災無線が鳴り響いている。音声が微妙にズレながら重なって相変わらず聞き取りにくいが、やはり7時からの会見を見るようにと言っている。
「やあねえ何かしら、戦争でも始まるの?」
言い知れぬ不安と、世界的な大イベントの期待感とが入り混じって、正一は妙に落ち着かなくなった。グラスに残ったビールを一気に飲み干し、震える手で瓶を傾ける。
最初のコメントを投稿しよう!