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「あれが噂のお前の片割れねえ……」
ソファーは俺が独占しているからか、メビはベッドに腰掛ける。
拾われてからの俺は、しばらく馴染めなくて。ずっとケイ、ケイって言ってた。皆知ってる、俺が五大貴族ヴィストン家に捨てられた子供だって。
俺がヴィストンを恨んでないことも、皆知ってる。
「手、出さないでね」
ちょっとだけ真面目に言ってみる。
ケイのことが大事だって、言わなくても分かってるはずだ。それでも念を押したのは万が一のことがあっては困るから。傷一つつけてみろ、キレるぞ。
離れて暮らしていた分、もっとずっと大事だって思うんだ。誰がケイを傷つけたとしても、俺はたぶん絶対に許せない。
「俺別に男に興味ねえって」
「そっちだけじゃねーよ」
「お前の弟だろ、心配すんな」
「……ちょー可愛いんだよね」
「ははっ、お前もちゃんと兄貴だったんだなあ」
「そりゃあもちろん」
生まれた時から兄貴ですよ、双子でも。家を継ぐのも俺なんだってずっと言い聞かされてきた(主に口うるさいジジイから)。何よりいつも一番そばにいた唯一無二の存在だ。
俺が兄で、ケイが弟。それはずっと変わらない。大事なのも、ずっと。
好きって気持ちも、こういう環境だからなおさら、減ったりなんかしないだろう。
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