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「・・・・・あの後、アイはどうしてたの?」
引き離された俺達、俺達の意思なんて関係なかった。どれだけ手を伸ばしても、子供の小さな身体は大人の前では無力だった。
「あの後さ、森に連れていかれたんだ」
「森?」
「うん。そこで、育ての親に拾ってもらった」
三日、くらい経った頃だったのかな。覚えてないや。あの頃は本当に怖くて、寒くて寂しくて。
たくさん名前を呼んだ。ケイ、父さま、母さま、って。もちろん誰も答えてなんてくれない。そこにいるのは俺だけだった。
「今思えばさ、あの人も少しは罪悪感を感じてたんじゃないかな」
「・・・父様のこと?」
「でなきゃ、わざわざ邪魔な存在だった俺を魔物の出ないような場所を選んで置き去るなんてしなくない?」
「っ・・・」
死んでたよ、本当なら。
いらない存在なら、簡単に処分する方法はいくらでもあった。
飢えも寒さもしのぐ術はなかった。ただ寒くて、ひもじくて、寂しくて悲しくて。
あの時の俺はまだ分からなかった。でも今になって思える。なのにそうしなかったのはって。
「現に俺は生きている。運よく人に拾ってもらったから」
ヴィストンから離れて、遠いところで。
生きてくれって、そう願ったんじゃないかな。
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