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「あの人も、人の親だったってことだよ」
捨てられた、それは事実だ。でもそれは俺の死を望んだことじゃない。
何も言わずに去ってしまった父。思い出せば、その顔はなんだか泣きそうになってたな。そんな父に、俺は何も言えなくて。
「憶測だけどね」
「そう、だったんだ・・・僕、ずっと父様が許せなかった」
「うん」
「聞いても何も答えてくれないし、知らないの一点張りだし・・・アイはっ、いないしっ」
ポロ。ボロッ。
透明な塊が二つの赤からこぼれ落ちる。しゃくり上げながら、言葉は続く。
「寂しかった!怖かったよっ・・・」
「うん、俺も」
ぎゅっと強い力が抱き付いてくる。気付けば俺も泣いていた。
ケイも、俺と同じだった。
突然一人になって、親はもう信用できなくて。悲しくて寂しいのに、五大貴族の跡取りとしての重荷がのし掛かって。
きっと、ずっと一人で溜め込んでたんだろうな。誰にも言えずに。
「・・・あの人達のこと、許してあげて」
「ぐずっ、アイ」
「徐々にでいいから、俺はもう何とも思ってないし、親がちゃんと育ててくれた。ケイに会えたから、もうなんでもいいよ」
一番辛かったことは、捨てられたことじゃない。ケイと引き離されたこと、それだけだった。
だからもう、いいんだよ。
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