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それからなんとなく昔みたいに二人でお風呂に入って、昔みたいに二人でケイのベッドに潜り込んだ。
部屋も広いからやっぱりベッドも相応のサイズで、二人が寝るには問題ない大きさだった。
「ほんとに、昔に戻ったみたいだね」
「ね」
それからもたわいもない話は続いた。
お喋りが止まって、すぐそばで寝息が聞こえてきたのは本当に遅い時間。どちらかといえば夜型の俺はまだ起きていられた。
俺の知らない話でも、ケイがそばにいてくれるだけで満足だった。
「・・・・・ケイ?」
薄暗い闇のなかで、ケイの寝顔が見える。寝ちゃったか。
変わってないなあ。おそらく俺と同じ、まだあどけなさの残る寝顔。無意識に手が伸びて、頭を撫でる。
その刹那。
─────ギクリとした。
咄嗟に手を引いて、自分の手を凝視する。自身のそれが、赤黒い何かで染まっているように見えたから。
もちろんそれは錯覚だ。分かってる。
十二分に理解していても、そばにいると思い知らされる。
ああ、やっぱり俺達は住む世界が違うんだね。
俺の両手は、洗っても洗っても落ちない赤が染み付いている。ケイが知らない、裏の世界。俺がそばにいたら、ケイまで汚してしまいそうだと思った。
赤のついていたと思った手をぎゅっと握る。強く。
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