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まあ、殺意は感じないし。
そうやってあまり気にせずに座っていると、いつの間にか五大貴族の挨拶に変わっていた。
火、水、風、雷、土。それらを司るのが五大貴族。遥か昔に、最初にその属性を賜った賢者達の末裔だとかなんとか。たぶんそんなような言い伝えだったような気がする。
どうでもよかった。興味もなかったし。
だけど司会の人の言葉に、どうしても素知らぬ顔が出来なかった。
「続きまして・・・五大貴族、ヴィストン家御当主より祝福の御言葉を頂戴いたします」
────ヴィストン家。
火を司る五大貴族。
思わず顔を上げた。そこにいるであろう人物を目にしたくて。
「────新入生の皆様、御入学、おめでとうございます」
随分、老けたなあ。
遠くから、微かに小さく見える舞台を見据える。
当たり前か。記憶のなかにあるあの人はもう十年も前の姿。それでも十二分に若々しい姿を保っているのはさすがというかなんというか。あの頃が若く、いや幼すぎたのかな。
それ以外に、何か特別な感情が沸き上がってこなくて心底安心した。
俺はもうふっきれていることに。
よかった。
よかった。
これなら、───とばったり会っても・・・。
上手く、いくといいな。
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