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初めの二人の名前に覚えはない。
だけど、後の二人、特に一番最後に聞こえた名前には嫌というほど覚えがあった。
ケイラー。
────ケイラー・ヴィストン。
「やっぱり、いるよなあ・・・」
無意識に呟いた弱々しいそれを、誰にも拾われていないことを願う。
段々とこっちに近付いているのが分かる。やっぱり窓際だよなー!とかって話してるのが聞こえてくる。この声はたぶんアルティナ。水の五大貴族だった気がする。
いや、それよりも。
心拍数が、この上なく上がる。心臓が口から飛び出そうなくらいの緊張。
見ちゃ、ダメだ。目を向けたらダメ。
そんなの分かってる。
なのに、なんでだろう。
身体が強張って、背中に冷たい汗が流れる。思い通りにならない自分の身体は、ダメだと分かっているのに勝手に動こうとする。
「どうした?ケイ」
あっちの存在もすぐそばで止まった。
ダメ。
ダメだから。
気付いちゃ、ダメだよ。
なのに、どうしてかな。
「────アイ・・・?」
それを聞いたら、もうダメだった。
俺の目は、真っ直ぐそれを。
俺と、瓜二つの顔を捉えていた。
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