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目が合ってしまえば、俺は──俺と同じ顔がみるみる目を見開いていく。
それに俺はどんな反応をしたらいいのか分からなくて。でもたぶん俺もおんなじような顔をしていたと思う。
「・・・・・ケ、イ」
俺がそう呼べば、ハッとしたように辺りをキョロキョロしだして。
「ちょっ・・・!?」
スリ本業の泥棒も吃驚な早業で俺の腕を掴むとズカズカと人混みを掻き分けて人気のない方へと廊下を早歩き。
後ろからケイ!と叫ぶ声が聞こえてきたけど、きっと今のこれには聞こえてないんじゃないかな。
ようやく足が止まったのは、あまり使われていなさそうな教室が並ぶ行き止まりに指し当たった時だった。
それでも腕は離してくれない。
「・・・手、離してくれないとシワになっちゃうんだけど」
思ったことを言えば、何故か泣きそうな顔を向けられて。
腕は離してくれなくて。
「・・・・・アイ、なんだよね?」
しょうがないなあ、なんて。
ちょっとだけ下手くそな笑顔を作ってみせた。
「うん。久しぶり───ケイ」
誤魔化せない、と思った。
こうやって対面して初めて気付く。お互いの存在の大きさに。
「っ、アイッ!!」
だって俺達は、生まれる前から一緒だった。
一緒になる、運命だった。
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