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「それ、咲山に渡すつもりだったんだろ?」
ビクッとしたけど、知っている声に振り向いた。
「栄田<さかえだ>。……だったら何よ。」
栄田も陸上部の選手で、わたしよりちょっと頭がいいからって、わたしをよくからかう、ちょっとヤなやつ。
「あいつ、頑なに受け取らないよなぁ。貰うだけでもすればいいのにさ。
余ってるんだったらさ、俺にくれよ。」
「何でアンタなんかにっ。わたしが自分で食べますぅ。」
「じゃあ今ここで食えよ。」
「何でよ。」
「いいから食えよ。」
「何でアンタに指図されなきゃいけないのよ。」
「いいから食えって。」
栄田の言い方に気圧されたのもあるけど、けどまぁココで食べようと思って座っていたんだし、と箱の中からチョコを一つ摘まんだ。
……ん?一つ減ってる。
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