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「…こりゃすごいな…。俺ぁ地元ッ子だが、こんなの見たことねぇ。やっぱ、今年の夏は暑すぎるんだ。太平洋に異常ありってんだ。こんなんで沖行って漁なんざ出来ないだろうてなぁ…」
心のなかで、歩きながらそう思った。思ったことを最近はメモにして、作詞じみたことが趣味であった。
夏の浜は、夜もにぎやかだった。花火をやって騒ぐ子供たちや若者たち。バーベキューを美味しそうにやっているテントの集団。無謀にも宿をとらず、浅はかにも車中泊を試みようとする浜辺の車の列。こういったのが、地方の地元民の見る現状、というやつだ。ひろしは市の職員として、そういう問題を扱うことが仕事でもあるため、解決を探る散歩とメモはただの趣味だけではなく、仕事のためのものともなる。
地元となれば、怖いもの知らずだ。もやで視界がはっきりしなかろうと、夜の散歩は欠かせない。しかし、ひろしはこの時、このもやが恐ろしいもやだったことを、知る由はない。
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