チョコレート

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 私は息子が泣くかと思ったが、息子はコクンと頷いた。 「すごいね」  姉は、笑いながら私に言った。 「『待つ』ことが、できるようになってきたね」  そこには、何の感情も含んでいなかった。  姉は。こうやって、仕事場でも、子どもの「成長」を喜んでいるのだろう。  本当に、ただ素直に、姉は息子が「成長」したことを喜んでいた。  チンッと電子レンジが鳴って、姉は、息子の手に、自分の手を添えながら、包丁の使い方を教えた。  その間に、私はジャガイモや他の材料を切って、鍋を出して、材料を炒めた。  そうしないと、泣き出してしまいそうだった。 「あ、ありがとう。相変わらず手際良いね」  姉は、そんな私を見て、これまた笑顔で言った。 「てぎわ?」
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