1.○○○○に遭遇してしまった日

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「やっぱトリプル大正解。ナイスチョイスあたし」  心地良い春風に吹かれ、うーんと思わず声に出しながら晴れた空を仰ぎ見る。  わずかにクセの入った軽すぎる髪の毛が、肩の上で短くも後ろに流れた。  葉桜となりかけた樹々が優しい風にそよぎ、微かな葉ずれの音がやわらかく辺りに響いている。  例年に比べるとやや早いが、そろそろ花見シーズンも幕を閉じるのだろう。  それほど小さくはないこの公園内もかなり閑散としていた。  もっとも、昼下がりの陽光を心地よく浴び、好物を手に親友と春休み最後の一日をのんびりと過ごすのに、人混みは無いに越したことはないのだが。 「でも、こんな天気のいい日に世の皆さんはどこ行ってんだろね?」  もったいない、とつぶやいてチョコアイスにかぶりつく。
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