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突然「でも」から始まるセリフ構造にはあえて突っ込まずに、後ろを歩く柚葉は慎ましやかな微笑みを返した。
「あたしたちだって、さっきまで映画館にいたじゃない」
「ま……ね。うっ、ヤなこと思い出した」
映画という言葉で再び不快感をあらわにする親友を見、柚葉は微笑をたたえたまま困ったように吐息する。
「彩香の恋愛モノ嫌いも相変わらずね。何がそんなにイヤ?」
「イヤっていうか……そもそも柚葉はともかく、あたし柄じゃないじゃん。恋愛って」
「そうかなあ……?」
きっぱりと言いきったセリフに、おっとりと、だが生真面目に首を傾げる柚葉。
「そうだよ! んでもって何がダメって、あのどう見ても不釣り合いって設定なクセに最後にはちゃっかりまとまっちゃう主人公たちがね。どう考えたって見た目悪いよりはイイほうがいいじゃん。さっきのアレなんてライバルの女のほうが美人だし性格だってイイのに、あの男どこ見てんだバカ」
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