220人が本棚に入れています
本棚に追加
「え? え、何が?」
一方的に自己完結されて困るのは柚葉である。
が、そのあわてようを見て取り、やっぱりな……とどこかほっとしつつ苦笑してしまった。
これだから参ってしまうのだ、この親友には。
自身の優美な容姿をひけらかすことなく、嫌味っぽく卑屈めいた物言いをすることもない。
それどころかそんな外見の良し悪しなど初めから無関心、というフシさえある。
自分が――こんな自分が、こんなふうに上手くこの親友と付き合い続けていられるのは、ひとえに彼女の清らかさゆえにかもしれない。
心の底からそう思う。
出会いからなんだかんだで5年目に突入する仲である。
「いーの、いーの! ずっとそのままでいてよ」
眉間にシワを寄せてウンウンうなずきながら、ぽんぽんっと彼女の右肩を叩く。
その表情と仕草に妙に年寄りくささを感じて、柚葉は黒目がちの瞳を細めて小さく噴き出した。
「変な彩香」
そうして彼女は、綺麗に笑う――。
最初のコメントを投稿しよう!