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今度こそ抜けきれると思った足首が、最後の最後でバーに当たった。
小柄な体がバフリと厚いマットに沈みこんで数瞬後、支柱から外れたバーが軽い音を立てて落下した。
「……」
耳だけでそれを確認し、わずかに息を弾ませてそのままマット上にごろんと仰向けになる。
密かな願掛けが何度打ち破られても、変わらずそこに在る蒼い空。
悠然と見下ろされ、そんなちっぽけな存在どう足掻いたところで何も変わらないよ、といつも笑われているようで少しだけカンに障る。
(ダメなものはダメってことか……)
それとも最後に欲を出したのがマズかったか。
あきらめたような微妙な笑みとともに、小さなため息がこぼれた。
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