1.○○○○に遭遇してしまった日

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 軽く陶酔しながらも何か違うぞと思い至り、ぐりんと頭を振って親友の顔を覗き込んだ。 「もーう、いいんじゃない? 一年見つめつづけたんだからさ」  黙って物陰から見てないでぶつかっていきなよ、というのだ。 「え……ええと」  お決まりの狼狽えたような反応に、ちっまだ駄目か、と心の中で軽く舌打ち。 「じゃあさ、明日もし同じクラスになれてたら頑張ってみるっての、どう?」 (我ながらナイス!)  まあ、もし別クラスでもそのときはそのとき。  何か別なエサでこうして背中を押すことになるとは思うが。  心の中でへろっと舌を出しながら提案する横で、柚葉は伏し目がちに微笑んだ。 「……自信、ない」
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