1.○○○○に遭遇してしまった日

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   冷や汗タラタラでおそるおそる腹部を指差す彩香に気付いて、ああ……と少年は微かに笑ったようだった。 「大丈夫。コレは別件で……。てか、そっちこそケガなかった?」  少し長めの前髪から覗く形の良い目が、ほんの一瞬彩香をとらえる。 「――!」  ガラにもなくどきりとしてしまった。  にわかに活発に鳴り出した心臓をなだめるように、手は無意識にそっと胸のあたりを押さえにかかる。 「え、痛い?  もしかしてどっか――」 「あ……い、いえっ! 大丈――ぜ、全然ですっ」  ハイジャンのマットに落ち慣れている分、一般的な女子に比べたら頑丈なハズだ。  実際、本当にどこにも痛みはないし――。
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