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「なあに? やっぱり恋愛映画は観るんじゃなかったって?」
不快もあらわな自身の隣から、ふわりとやわらかな声。
腰まで伸ばした真っ直ぐな黒髪をさらりと揺らして、親友の柚葉が微笑んでいた。
「うー……まあ、ぶっちゃけ……ハイ」
「でも、勝負は勝負だから」
上機嫌に「ごめんね?」と言いつつ、白く細い指は顔の横で可愛く『チョキ』の形をとっている。
「そ、そりゃもう……ええ! 負けたのはワタクシですから? もう済んでしまったことをどうこう言ってもしょうがないってのはわかりマス……。わかっちゃいるんだけど……」
マズイ……とは思いながらも、声とともにいつの間にか作り上げていた握り拳が震えてきた。
固められたその右手に不機嫌からくるパワーが徐々にみなぎっていくのを感じつつ――
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