6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「ここを通るのも、これが最後になるな」
薄桃色に染まるブールバールを歩きながら、あなたはぽつりと呟いた。
私は黙って、その隣を歩く。
様々な思いが私の中で攪拌されて、ドロドロの塊になる。
あなたが纏っているのは、黒。
こんなすがすがしい晴れの日に、あなたはなぜか黒を纏っていた。
辺り一面に、花びらが舞い踊る。
それを眺めると、胸が痛くてたまらないのだ。
桜が咲かないように、何度願ったかわからない。
あなたの桜が咲けば、あなたは去って行くから。
それが分かっていて、応援して欲しいだなんて。
最後まで本当に身勝手な人。
そんな風に思ってしまう私は、あなたを愛する資格がなかったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!