麻薬

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───あ… 彼女は小さく呟くと 突然立ち止まった。 そして大きく瞳を開いた。 自分の頬を両手で包み込んで俯いた。 明らかに今までの何も感じていない彼女の表情ではなくて… 瞳に力が灯った。 何かが彼女の中を揺さぶった。 どこか遠くを見るように 何かを思い出したくて 考える、という事もわからない筈のに… ──あれは ふわっと鼻孔を擽るような香りで ──甘くて ──少し苦くて ──1粒 口に含むと口の中が締まって 口中にまとわりついて。 セロトニンが分泌される。 それは、一時的に大きな幸福感を彼女に与えた。 ──溶けた後も余韻が残る けれど、与えられた満足感は直ぐに消え去る。 だからこそ 不安や苛立ちの感情が彼女を襲い、また手に取り口に含む。 ──1度食べたら翌日も、また、その翌日も、見れば手を伸ばしてしまう。 ──まるで麻薬のように。
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