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彼女は、愛されていないと思っていた。
自分が周りを思っている程思われてはいないと思っていた。
2つ上の兄は優しく、勉強も出来た。
いつも友達に囲まれている人だった。
それに比べ、彼女は
目つきも良いとは言えず、勉強だって下のあたりをいつもウロウロしていた。
両親はそんな優秀な兄だけが可愛くて。
自分の事は見捨てていると思っていた。
常に
自分に向けられる瞳に苛立ちを募らせて
優しい言葉も耳に入る事はない。
自分は1人なのだと思い込んでいた。
だから彼女は毎日チョコレートに手を伸ばした。
チョコレートを口に含んでいる時だけが
彼女を笑顔にした。
そんな彼女を見ている人が
「ホントにチョコレート好きだよね。」
と、微笑む姿にさえ馬鹿にされていると感じ、苛立った。
彼女は瞼を伏せ
ポツリと口を付いて出た
──食べたいな。チョコレート。
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