第2章 犬も食わない

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冠くん……。 意外だったのか、落胆したのか。 僕の言葉を耳に、彼女が、わずかに驚いたものを表情に映して呟いた。 そして、 「分かった。もう、金曜の事は忘れて」 少し冷たい声でそう言うと、彼女は、そのまま寝室へと消えていく。 しかし僕は、その後を追わなかった。 今の彼女が、僕が言えなかった事の真相を知ったとしても、 小野寺さんの冷めつつある気持ちに対しても、 そして、恐らくそれをずっと口にしなかった僕に対しても、 彼女は傷つき、怒りすら感じるだろう。 だが、そうやっていずれにしても傷つくなら、 彼女には、もう彼らの間で起きつつある波風の渦中から抜け出てきて欲しい。 もう、彼らの事で思い悩んで、頑張り過ぎないで欲しい。 そして何よりも、変わらず彼女を想う僕のところに早く戻ってきて欲しい。 だからこの夜、僕は、寝室の彼女の隣に横たわることなく、 そのままソファで一夜を過ごしたのだった。
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