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冠くん……。
意外だったのか、落胆したのか。
僕の言葉を耳に、彼女が、わずかに驚いたものを表情に映して呟いた。
そして、
「分かった。もう、金曜の事は忘れて」
少し冷たい声でそう言うと、彼女は、そのまま寝室へと消えていく。
しかし僕は、その後を追わなかった。
今の彼女が、僕が言えなかった事の真相を知ったとしても、
小野寺さんの冷めつつある気持ちに対しても、
そして、恐らくそれをずっと口にしなかった僕に対しても、
彼女は傷つき、怒りすら感じるだろう。
だが、そうやっていずれにしても傷つくなら、
彼女には、もう彼らの間で起きつつある波風の渦中から抜け出てきて欲しい。
もう、彼らの事で思い悩んで、頑張り過ぎないで欲しい。
そして何よりも、変わらず彼女を想う僕のところに早く戻ってきて欲しい。
だからこの夜、僕は、寝室の彼女の隣に横たわることなく、
そのままソファで一夜を過ごしたのだった。
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