第2章 犬も食わない

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ナッちゃん……。 小さく呟いた彼の顔が、ほんの微かに歪んだ。 そして、 「ギュッてしていい?」 ちょっと揺れる瞳を上目遣いに向けられ、頷き返すと同時に 思いっきり抱きしめられた。 「ナッちゃん、僕もごめんね。でも、でも僕……」 言葉尻を消した彼が、私の肩に顔を埋める。 そんな彼の大きな背中を、私は、そっと抱きしめ返した。 「冠くんは、何も悪くないでしょ? 今回は、私が考えなさ過ぎたんだもの」 許してくれる?  尋ねた私に、彼が肩の上でコクンと頷く。そして、 「ナッちゃん」 「ん?」 「好き」 「うん、私も好き」 「ナッちゃん、大好き」 「私も、大好き」
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