第3章  春のバースデーと初夏のお休み

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そうして結局、同僚たちにペコペコと頭を下げて定時にオフィスを出て、 間もなく私は、短く彼にメールを打った。 『リクエストのグラタン作って待ってるね。 でも、ごめん。今朝から始まっちゃった……』 しかし、帰り道でも夕食を作っている間も、珍しく彼からの返信は 送られてこない。 そして、 そんなに、忙しいのかな……。 ふと、少しだけ心配がよぎった時、 「ただいま」 玄関から、嬉々とした彼の声が届いた。 しかも、間もなくキッチンの入り口に現れた彼は、 走って来たのか、少し頬が上気して呼吸も荒い。 そして、 「お帰り。お疲れ様」 そう言う私の目の前に歩み寄ってきた彼は、ちょっとだけ切なげに 眉根を寄せた。
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