第3章  春のバースデーと初夏のお休み

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「ナッちゃん、ギュッてしたい。ギュッて、していい?」 まさに、お預けを一生懸命守る子犬のような彼に、 私は、思わず苦笑をしつつ頷いた。 それと同時に、待ちわびたかに、思いっきり彼の腕の中に抱きすくめられる。 「ナッちゃん……。ナッちゃん、会いたかった」 フフッ……。 こんなに真っ直ぐに私を求める彼が、ものすごく愛おしい。 「冠くん、お誕生日おめでとう」 すると、「ありがとう」とくぐもった声が返ってくる。 しかし、 「ナッちゃん……」 ふっと腕を緩めた彼の顔が、極、自然にそっと近づいてきて、 私は、ちょっと慌てて止めに入った。
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