第3章  春のバースデーと初夏のお休み

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「なんか、全部自社のもので恥ずかしいんだけど、 どうしても冠くんとペアウォッチにしたくて。 思いっきり、社販割引きに頼りました。 それにこのチョコレートも、狭川さんにちょっとワガママ聞いて もらったしね」 そう話してくれた彼女は、照れ臭そうに小さく舌を出す。 でも、フォルトゥーナの物というだけで、僕には特別なもの。 だから、こんな彼女の気持ちが、素直にすごく嬉しかった。 「ありがとう、ナッちゃん。大事にします」 それに、いつもの様に「フフッ……」と小さく笑ってくれた彼女を 改めて、すごく好きだと思う。 だからこそ僕は、僕の中でどうしても燻る落胆を知られたくはなかった。
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